Alexaの本を書いて技術書典5で販売するまで

はじめに

以前から本を書いてみたいなと思っていました。 そんな事を考えながら数年が経った2018年。 タイミングとモチベーションが重なり本を書くことになりました。 そこで、本を書いて技術書典というイベントで販売するまでの経緯を書いて見たいと思います。

なぜ本を出すのか?

実は本を書いてみたいと考えるようになったのはかなり前です。 きっかけは、カズさんと話していた時でした。 内容は要約すると次のような感じです。

「エンジニアはソフトウェアは作れるけど物理的に手で触るモノを作ることができないよね。でも、技術本なら僕らの知識を物理的なモノとして残せるから本書いてみたいよね。」

物理的なモノに価値を感じるかどうかは個人差があると思うんですが、この話を聞いている時に確かに!と僕は思ったんですよね。 なので、今回は紙で出版する事を当初から考えていました。

技術書典とは?

そんな時に、堤さんのブログを読んだことで、東京では技術本だけを扱う同人誌の祭典があることを知ります。

#技術書典 4で「Metal入門」という本を販売します - その後のその後

このブログを読んだ直後に、オープンセミナー2018@岡山のアンチぼっちランチで湊川あい さんさんとご一緒する機会がありました。 湊川さんは技術書典に何度も出典されていたので、リアルな話を直接聞けました。 これがきっかけで今年の技術書典5で書いた本を出すことを決めます。

共著での進め方

本の内容は自分が持っているスキルセット&需要がありそうという組み合わせを考慮してAlexaにしました。Alexaはまだまだ発展途上だし、個人的にも注目しているので本を書くには最適だと考えました。

ただ、本を書くとなると文章量もそれなりに必要です。そもそも文章を書くことが得意ではないのでどうやって本にするだけの文章を書くかが悩ましい所です。 そんな時に、倉貫さんに共著で書くことを勧められます。 確かに、共著なら各自が得意な箇所だけを書けば良いし、そもそも自分が知らない知見も増えそうです。

Alexaで共著を書くとすれば去年から仲良くさせて貰っている二人の顔がすぐに浮かびます。 日本のAlexaを牽引しているJAWS-UG KobeのItoさんOkamotoさんです。 メッセンジャーで声をかけたら二つ返事でOKを貰いました!さすがJAWS-UG Kobeのメンバーは巻き込まれ方も速い。w

しかも、日本では2人しかいないAlexa Championsがこのお二人です。 恐縮です。ただ、この2人と一緒にAlexaの話を書けたからこそ面白い内容になっています。

こうして、共著で本を書くことが決まり定期的にミーティングをして内容を詰めていきました。 もちろん、3人とも住む場所がオランダ、神戸、岡山とバラバラなんですが、皆オンラインでのミーティングに慣れているので何の違和感もなく進めていきます。リモート共著?ですね。

「俺たちが知りたかったAlexaの話」になった経緯

当初はAlexaの初心者向けの本にする予定でした。 何故なら僕がAlexaを本格的に仕事で触っているわけではなく、趣味の範囲で触っているだけだったのでそれ以上高度な内容を書くのは難しいだろうという判断からでした。

しかし、ミーティングで話していく中で、Alexaの初学者向けの本は沢山出版されているし、良書もあるので僕らがわざわざ書く必要はないという事になりました。

はじめてのAlexaスキル開発 [音声認識アプリ開発の基礎知識を身に付ける! ]

Alexaスキル制作テクニック (I・O BOOKS)

どうせ書くなら、自分たちが書きたい、知りたい本にしよう。つまり、Alexaスキルは既に作ったことがあるけど、より効率的に、より高度にスキルを作るための技術書にしようと。 つまり、俺たちが知りたい話を書こうということで少しスキル開発に慣れた人を対象とすることにしました。この時に仮で決めた本題が「俺たちが知りたかったAlexaの本(仮)」です。

その後、表紙のデザインをAndoさんにお願いした時に、ネタで作ってもらった「俺たちが知りたかったAlexaの話」の表紙が素敵だったの正式にきまりました。略してオレアレ。

俺たちが知りたかったAlexaの話

同人誌の作り方

同人誌を作るといっても本すら書いたことが無いので、一体どういう形で作っていけばよいのか皆目検討がつかない状態でした。

そこで、技術書典のバックアップ印刷所の株式会社 日光企画に電話した所、丁寧に教えていただきました。

用紙サイズ

技術書典の方はA5 or B5を選ぶ方が多い。文章が中心ならコンパクトなA5、コードが多い場合は横が長いB5がオススメとのこと。

納品データ

表紙はPSD or EPSで、本文はPDF形式で納品すれば良いです。

印刷方法

初めてなら、スタンダードフルカラーセットがオススメ。

まずは、3人で書きたいことを上げて目次を作ります。その後、githubにMarkdown形式で書きながら切りのいい所でプルリクを出してレビューを受けます。

また共著で書くと文体がずれるので、なるべく統一できるようにnpm lintで確認しながらプッシュのタイミングでCircleCIを回しました。

この辺りの技術的なところはまた別の機会で記事にしたいと思います。

本の内容

本の内容は上でも書いたとおり、既にスキルを作ったことがある方を対象としています。 インテントやスロットなどのスキル開発の基本的な説明には触れていません。

そもそも、VUI設計とはどうするべきか?ASK CLIを使った効率的なスキル開発方法。ASK SDK開発での開発手法やスキルのテスト方法など実践的な内容になっています。

スキル開発を次のステップに進めたい方はぜひ手にとって見てください。

俺たちが知りたかったAlexaの話

本をオープンソースで公開します

そして、この「俺たちの知りたかったAlexaの話」は発売後にgithub上でオープンソースとして公開します。 オープンソースは元となったMarkdown形式のみでPDF版や表紙は付いてきません。しかし、内容だけなら無料で読むことができます。

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これは3人で話していた時の雑談で、沢山のオープンソースプロジェクトによって車輪の再発明は減り多くの人が幸せになった。 さらにオープンソースを推し進めるともっと幸せな人が増えるのか?

そんな話から、もし本がオープンソースになればどうなるのか? 皆の知見が集まり、必要であればプルリクで最新化してAlexaの開発に貢献できるのではないか。 もっと便利なスキルが出てきて人々の生活が楽しくなるのではないかという実証実験のためにオープンソースにすることにしました。

またライセンスはCreative Commons — 表示 - 継承 4.0 国際 — CC BY-SA 4.0にしています。 つまり、自由に配布してもらっても良いし、この本をベースに改変して売ってもらっても構わないということです。

この様に本を技術書典で売りつつも、オープンソースとして内容を公開してしまうのは、同人誌でなければ難しかったでしょう。

まとめ

最後に、「俺たちが知りたかったAlexaの話は」の製本版は技術書典で販売します! お近くの方は足を運んで手にとってみてください。

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